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2020年2月8日、東京都千代田区の富士ソフトアキバプラザにて「第9回最先端聴覚セミナー」を開催いたしました。200名を超える方に参加いただきました。お申し込み、ご来場をいただいた方へは弊社スタッフ一同、心より御礼申し上げます。こちらでは、講演の内容をレポートいたします。
2020-02-26

第9回最先端聴覚セミナーレポート

2020年2月8日、東京都千代田区の富士ソフトアキバプラザにて「第9回最先端聴覚セミナー」を開催し、200名を超える方に参加いただきました。お申し込み、ご来場をいただいた皆様に弊社スタッフ一同、心より御礼申し上げます。 要約になりますが、講演の内容をレポートいたします。

座長講演:小川郁先生(慶應義塾大学医学部 耳鼻咽喉科)
「慢性感音難聴は治せるか?-慢性感音難聴に対する新しい治療戦略-」

1.超高齢社会における聴覚障害

  • 本邦では厚生労働省が2015年に新オレンジプラン(「認知症施策推進総合戦略」)を策定、認知症の危険因子として難聴が、防御因子として活発な精神活動(コミュニケーションツールとしての補聴器)が文言化された。
  • しかしながら難聴と認知症の関連については未だ十分なエビデンスがない
  • 東京都では、現在都内8区において補聴器購入支援事業がある(中央区・新宿区・墨田区・江東区・大田区・豊島区・葛飾区・江戸川区)。

2.内耳再生医療の最前線

  • 再生医療への取り組みとして、内在性幹細胞を利用した再生戦略(有毛細胞に分化し得る幹細胞を利用する方法)と細胞移植療法の確立(iPS細胞を試験管内で様々な細胞に分化させて移植する方法)が示された

3.iPS細胞の創薬研究

  • 慶應義塾大学では、現在難聴治療としては世界初のiPS創薬研究(医師主導治験)が進行中。

講演1:武田英彦先生(虎の門病院 耳鼻咽喉科)
「補聴器の両耳装用について」

両耳聴のメリット(補聴器両耳装用で期待できる効果)

  • 最小可聴閾値の改善
  • 両耳加算効果(~3dB改善)→ 補聴器のボリュームを下げられる
    • 聴覚疲労の軽減
    • 音響外傷の予防
    • ハウリングリスクの軽減
  • 語音弁別能の改善
  • 音の方向感の改善(音源定位・音像定位)

音像定位検査

  • 方向感検査の一種
  • 患者はヘッドフォンを装着、両耳間で意図的に入力音の強度差と時間差を作り、脳の音像変化を調べる検査
    • 難聴耳では蝸牛障害により聴覚フィルタの形状が拡がる(=周波数の選択性が低下する)
    • 正中定位音像は聴覚フィルタが拡がるほど不鮮明になる
    • 両耳とも難聴で左右差がある場合では、左右差がない場合に比較して音像定位がより不鮮明になる
    • 左右で音像が一致しないと、悪聴耳からの入力が雑音として両聴耳の聴こえを妨害する
  • 両耳装用の適応
    • 聴こえの左右差が少ない人
      • 左右の平均聴力閾値差が10~15dB以内
      • 左右の最高語音明瞭度差が10~15%以内

講演2:鈴木大介先生(済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科)
「当科補聴器フィッティングのイロハ ~“なくてはならない”補聴器を作るために~」

  • 済生会宇都宮病院での調整希望者(他機関で購入)の適合率(N=253:4年間)
    • 適合2例(1%)
    • 適合不十分251例(99%)
  • 90日間のトレーニング期間
    • なぜ90日なのか?
      • 脳が補聴器からの音を活用できるようになるのに必要な期間が約2か月
      • 残り1ヵ月は、慣れと聞き取りの改善に伴って生じる患者の「希望の変化」に応じ、更なる調整に費やす期間
        • 3ヶ月間頻回(週1)に診察と調整
        • チーム医療と長期的フォローアップ
      • 初日から常用を指導
        • 常用することで音に早く慣れるため、その後の調整で増幅しやすくなる
        • 常用により患者自身も装用効果を実感する機会が増える
        • 常用することで問題検出を効率化し、改善の機会を逃さない

 

講演3:Heike Heuermann, Ph.D. (WS Audiology)
「About the Future of Hearing Aid Technology」

  • 我々の知覚(視覚も聴覚も然り)は事象の物理的側面からのみ生じるものではない
  • 心理的・経験的な知識や統計学的分析に基づき脳が特徴を抽出し関連付ける
  • 特徴の抽出も度が過ぎれば本来の意図から外れ識別不能になる
    • 例えば補聴器において雑音を完璧に抑制したら、逆に言葉の理解が困難になる
  • 機械工学的なアルゴリズムの変遷として、人工知能、機械学習と発展し、現在はディープラーニングのフェイズにある
    • ディープラーニングでは演算処理のルールを自動で作成・更新できる(ディープニューラルネットワーク3層構造による演算処理を行う)
    • ディープニューラルネットワークの構築により、将来的には雑音抑制機能の更なる洗練が期待できる